はたらくママ×尾木ママの対談企画 Part.02

インタビュー

2021.06.08
ゲームや動画をごほうびにするのはNG?! 子どもを依存から守る子育て方法とは?
前回の対談では、子どもたちのスマホ・ゲーム依存が世界的な問題になっていること、そして、依存から子どもを守ることの大切さを学びました。そのなかでインタビュアーのママたちをびっくりさせたのが、「ゲームや動画をごほうびにするのは、本当はよくないの」という尾木ママの指摘です。
今回の対談では、この尾木ママの発言を深掘り。ゲームや動画など、“目に見えるごほうび”に頼らない子育ての大切さや、依存を防ぐ “親子の絆づくり”について語り合います。

目に見えるごほうびより、言葉のごほうびをたっぷり注ごう。

原田
子どもが宿題をやったごほうびにゲームをさせてあげるのはよくない、ということなんですが、これはなぜなんでしょうか?
尾木ママ
この子育て法のよくないところはね、ごほうびがないと何もしない、できない子どもになってしまう危険性があることと、子どもの成長にともなって、ごほうびの要求がエスカレートしていく場合があるからなの。最初は満足していても、だんだんと「もっと長い時間ゲームをやりたい」と時間の延長を希望したり、「おこづかいがほしい」「自転車を買ってほしい」というふうに要望が高価なものへとシフトする可能性があるんです。
大橋
エスカレートする要望に応えていたら、結局スマホやゲームに依存した生活習慣になってしまうかもしれないですね。子どもがやったことを褒めてあげたり、応援したい場合、どんな風に接するのが一番いいのでしょうか?
尾木ママ
一番いいのは「言葉のごほうび」をあげることです。「集中力、お母さんよりすごいと思うよ」「もう終わらせたの?がんばったね!」「ごはん全部食べてくれたんだ、ありがとう」というように、言葉でたくさんほめてあげてください。お父さん、お母さんの言葉は、目に見えるごほうびよりも、子どもたちに響くものです。
原田
「言葉のごほうび」をしっかり伝えることで、子どもたちの心にどんな変化が起こるんでしょうか?
尾木ママ
子どもたちは親にほめられることで「自分は認められている」と感じます。「自己肯定感」が高まるわけです。自己肯定感をしっかりと持てるようになると、自分の行動の良し悪しを判断する「自己コントロール力」も身につきますから、ごほうびがなくても自然と宿題をやったり、お手伝いをしたりするようになっていくと思いますよ。
原田
言葉だけで子どもたちにいい影響を与えられるんだ……。これなら、今日からでもはじめられそうです!
 

ゲームやスマホ以外の楽しい体験を知れば、子どもたちは自分から変わっていく。

大橋
ごほうびとしてゲームや動画をしている場合は、言葉のごほうびに切り替えていけばいいと思うのですが、それ以前にゲームや動画にハマってしまっていて、親が言ってもやめない、という子どももいると思います。そういった場合、親はどんなふうにその子と関わっていけばいいのでしょう?
尾木ママ
子どもにゲームをやめさせるために、ゲーム機を取り上げるご家庭もありますが、これでうまくいっている例はほとんどないですね。デジタル機器と距離を置くために大切なのは、「ゲームやスマホより楽しいことがあるんだ!」と気づかせてあげることです。
原田
具体的に、どんなことをしてあげるべきなのですか?
尾木ママ
例えば、中高生向けのインターネット・ゲーム依存治療プログラムでは、参加者は大自然の中のキャンプ場へ行ってさまざまな体験をします。魚釣りや登山、料理など、早寝早起きしながら一日中アクティブに動き回るんです。無人島で実施されたインターネット依存の傾向がある小中高向けのキャンプでは、どうしてもがまんできない場合は毎晩1時間以内であればスマホを使うことも許されていました。ところが、子どもたちは外で遊んだり、何かつくったりする方が楽しくて、次第にスマホやゲームと適切な距離をとることができるようになったというんですね。こういった例からも分かるように、リアルな生活を充実させること、そして楽しい体験や思い出を親がたくさんつくってあげることが依存予防の第一歩になるんですよ。
原田
ゲームやスマホのバーチャルな体験でなく、リアルな体験をさせてあげる必要があるんですね。
尾木ママ
おおげさなことをやる必要はないのよ。例えば、庭先でバーベキューをしたり、一緒に日曜大工をやってみたり、そういったことで十分なんです。ゲームやスマホを取り上げて子どもたちを締め付けるんじゃなく、楽しい方に導いてあげましょう。
大橋
その方法なら、子どもたちも自発的にスマホやゲーム以外のことに興味が向かっていきそう!ただ、うちはまだ子どもが小さいので、アウトドアやものづくりは難しいかも……。小さい子には、どんなことをしてあげるといいのでしょうか?
尾木ママ
小さいお子さんにはぜひ絵本の「読み聞かせ」をしてあげてください!これはもう、絶対おすすめよ。
 

読み聞かせは、子どもの心だけでなく、親の「共感能力」も育てる。

尾木ママ
著名な脳科学者の方々も、絵本の読み聞かせを推奨しています。絵本の読み聞かせは、まず子どもの五感や喜怒哀楽を豊かに育みます。そして実は、親にとってもすごくいい効果があるんですよ。読み聞かせをしている時、読み手である親の「前頭前野」が活発に働いています。前頭前野は「思考や想像力、コミュニケーション、感情のコントロール」といった機能を司る部分。読み聞かせを通して子どもが何を考えているか、何を感じているかを察する親の「共感能力」が向上したり、母親のストレスが減るという研究結果もあるんですよ。つまり、読み聞かせをすると子どもの心が豊かになるだけじゃなくて、親の心も成長するんですね。
大橋
親にもすごくいい影響を与えてくれるんですね!それは全然知りませんでした。
尾木ママ
そうなのよ。あとはね、体を動かす遊びを積極的にさせてあげてほしいの。最近は、5秒以上片足で立つことができない、しゃがみこむことができないといった子どもの運動器機能不全である「子どもロコモ」の子たちが増えていて、文科省でも幼児期からさまざまな遊びを中心に、毎日、合計60分以上、楽しく体を動かしましょう、という指針を出しています。コロナ禍で外遊びが難しければ、屋内でもOK。年齢に応じた発達特性を踏まえつつ、宝探しゲームやダンスなど、工夫して遊びながら、体を動かす楽しみを与えることが大切です。
大橋
とても参考になります!子どもが楽しめる体験や遊びを日常に取り入れて、前向きにスマホやゲーム依存を防いでいきたいと思います。
尾木ママ
そうですね。そうやって依存を防ぐことで、子どもが「隠れ近視」になってしまうリスクも軽減できると思います。
原田
「隠れ近視」ですか! 私たちが開発に関わっているAIグラスも、まさにその問題の解決に取り組んでいるんです。

Part 3につづく…
はたらくママ×尾木ママの対談企画 Part.03

⇒part01はコチラ「はたらくママ×尾木ママの対談企画 Part.01」

プロフィール
尾木直樹(尾木ママ)さん
1947年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、私立海城高校、東京都公立中学校教師として子どもを主役とした創造的な教育を展開。のちに大学教員に転身し、2004年に法政大学キャリアデザイン学部教授、2012年には法政大学教職課程センター長・教授に就任。定年退官後、現在は法政大学名誉教授。『こわい顔じゃ伝わらないわよ 尾木ママの子育てアドバイス』(新日本出版社)など著書も多数。「子育てと教育は愛とロマン」「学校は安心と失敗と成長の砦」が信条。